2011.2.14 update
マリンアクションを共に立ち上げたELNA事務局長・田中真一と、ELNAのソーシャルメッセンジャーフリーダイバーの平井美鈴。今回はELNAが取り組んでいるウミガメの保護活動についてふたりの対談をお届けします。
-両者は昨年、パートナーシップを結びました
平井)フリーダイビングの仲間達からも、今まではELNAを知らなかったけれども、このことをきっかけにELNAを知り「小笠原海洋センターもELNAの運営なんだね」と言われることがあります。フリーダイバーは、私も含め小笠原好きの人が多いですから。
田中)そうですよね。ありがとうございます。
平井)私にできることは、このようにまわりの人たちに、ELNAのことや海洋保全活動について発信することだと思っています。
ELNA事務局長田中さんと私。2010年世界選手権金メダルとともに
-ELNAのウミガメ保護活動について
平井)ところでELNAはインドネシアでウミガメ(タイマイ)の保護活動をしていますが、 具体的にはどのような活動をしているのですか?
田中)タイマイが産卵する島を借り上げたり、卵を買い上げたりして、タイマイの卵を地域住民による採取から守る活動をしています。卵の密漁者だった人を雇い入れて卵を監視してもらっているのですが、その効果を確かめるため年に4~5回は現地に行き、ウミガメが産卵した場所を掘り返して、孵化率を調べたりします。また、ウミガメが産卵する浜にあがってこられるよう、流れ着いた流木やゴミ、広がってしまった植物を取り除いたりして、産卵海岸の整備も行っています。
平井)インドネシアのセガマ・ブサール島で、ウミガメの里親を募集していますよね?
田中) はい、ウミガメ保護島のオーナーになっちゃおう!プロジェクトですね。
セガマ・ブサール島はELNAが借り上げている島の1つですが、ウミガメ1頭ずつではなく、区画を決めて、1区画ごとの里親になっていただいています。
平井)じゃあ、里親が見つからなかった区画のウミガメの卵はどうなるんですか!?
田中)それでも、保護しますけどね(笑)
平井)よかった(笑)自分が里親になった区画の卵がどうなったかはわかるのでしょうか?
田中)はい。自分の区画にどのくらいタイマイが産卵して、何頭の子ガメが孵化して海に帰って行ったかということを年2回の報告で知ることができます。また、島の写真が付いたオーナー証(デジタル画像)も発行しています。携帯やパソコンの待ち受け画面として利用できますので、「この島は私の島!」なんて自慢もできますよ(笑)。
インドネシアのタイマイ
平井)インドネシアのタイマイが減ってしまった原因はなんでしょうか?
田中)タイマイの甲羅はべっ甲の原料となるため、その原料供給のために乱獲されてしまった経緯があります。ただし、ワシントン条約により1993年にタイマイの国際的商取引が禁止されましたので、タイマイの捕獲もかなり減少したのですが、卵には食用としての需要があるため、乱獲され続けています。
平井)えっ!?卵は食用なのですか?
田中)そうです。もともとは島しょ部住民の貴重なタンパク源として食用となっていました。近年は、ウミガメの卵が高く売れますので、その販売を目的とした採取がほとんどです。ウミガメ卵の採取だけで生計を立てている人も数多くいます。
平井)そういえば、小笠原でもウミガメを食する文化があって、卵も食べることがあるようですね・・・。
田中)小笠原では卵を採取することは禁止されていますが、親ガメは管理ルールの下で捕獲されています。お腹の中に卵を持っているメスも捕獲されますので、その卵が食用となることがあるのです。ですから、小笠原の場合はインドネシアの状況とは少し違います。小笠原に限らず、少し前まではウミガメが上陸する日本各地でウミガメの卵が食べられていたようですよ。調査の時に年配の方と話をすると、昔は卵を食べていたというような話をよく耳にします。
平井)そうなんですね、それは知りませんでした。
・・・後編へと続きます。後編は3月にお届けする予定です。